それは多くの場合、何気ないところから始まります。ある有力な論説や画期的な臨床試験で印象的な用語が登場し、数か月も経たないうちにあちこちで見かけるようになるのです。助成金申請書、学会抄録、学術論文において、あたかもその語を用いることによって研究の意義が高まるかのように、同じ表現が繰り返し使用されることがあります。適切に使えば、そのような用語は正確かつ力強い表現になり得ます。しかし、誤用や乱用されると、意味を鮮明にするどころか曖昧にしてしまう流行語となってしまいます[1]。
英語を第二言語として執筆する著者にとって、このリスクはさらに大きくなります。語彙を刷新することは容易ではなく、特定の用語や表現が、学術文献としてはすでに精確さを失っているにもかかわらず、長期間にわたり使用され続けてしまうことがあります。こうした用語の選択は、意図的な場合もあります。著者がある表現の響きを好む場合や、それが画期的な論文で用いられていたことに価値を見出す場合です。また、無意識的な場合もあります。初期の教育で身についた癖や翻訳ツールからの影響がそのまま引き継がれる場合です。いずれにしても、流行語句への過度な依存は、論旨の明確性を損ない、読者を誤導し、さらには論文が刊行される前にすでに時代遅れの印象を与える可能性があります。
用語が流行し、廃れるまで
流行語が広まる過程には、共通のパターンがあります。最初は明確で具体的な意味を持ち、有力な研究によって裏付けられています。やがてその用語は、時流や編集方針に沿っているという印象を与えるために広く使われるようになります。ゲノム研究の時代には precision medicine(プレシジョン・メディスン) が広まり[2]、COVID-19のパンデミックでは real-world data(リアルワールドデータ) が頻繁に使われるようになりました[3]。初期段階では、これらの用語は緊急性の高い議論や資金調達の枠組みに研究を結び付ける助けとなります
しかし、繰り返し使われるうちにその意味は摩耗します。定義が曖昧になれば範囲はぼやけ、かつて鋭かった技術的表現が一般的なラベルへと変わってしまいます。読者からは内容よりも流行追随として受け取られるようになってしまいます。
常に最適な言葉を選ぶために
流行語を避けるということは、それらを一切使わないという意味ではありません。大切なのは、文章中のすべての言葉がそこで使われる必然性を持っていることです。次の質問を自分に投げかけてみましょう。
- 自分が説明しようとしている概念にとって、これは最適な用語か?
- 現在でも分野内で明確かつ広く受け入れられている意味を持っているか?
- より具体的で明確な表現に置き換えることで、主張が強まるのではないか?
判断に迷うときは、ターゲットとするジャーナルの最新かつ質の高い論文で、その用語がどのように使われているかを確認してください。分野の文章作法を学ぶ最良の方法は、その分野で発表された代表的なサンプルを読むことです[4]。
有効な事例と、そうでない事例
いくつかの有名な用語は、この問題をよく表しています。robust(ロバスト) はかつて統計的に強く再現性があることを意味しましたが、今では単に「良い」という意味で使われることもあります。novel(ノベル) は本来、真に革新的な成果のみに使うべきですが、既存研究のわずかな変化にも用いられています。precision medicine は、治療が患者個々に真に適合している場合にのみ有効な表現です。real-world evidence(リアルワールドエビデンス) は、データセット、実施環境、研究デザインが明確に記述されているときに説得力を持ちますが、単なる「臨床試験ではない」という意味で使われるべきではありません。
これらの用語も慎重に使えば十分に役立ちます。しかし、具体的な説明の代用にしてはいけません。「results were robust」と書く代わりに、効果量や再現性を明記しましょう。「novel approach」と書く代わりに、何が新しいのか(手法、対象集団、評価項目など)を明確にしましょう。このような姿勢は、研究をより明確に伝えるだけでなく、著者を信頼できる精緻な書き手として位置付けることにもつながります。
EXCEL Editingがお手伝いできること
EXCEL Editingでは、読者にとって最も効果的な言葉選びをサポートします。流行語をより鋭い代替表現に置き換えたり、必要不可欠な用語を最適な形で使用できるよう整えたりして、すべての表現が正確かつ最新で明確になるよう原稿をブラッシュアップします。
科学の言葉は常に変化しています。言葉を慎重に選べば、分野の変化に追随するだけでなく、その先を行くことができます。
明確に、そして最新の表現で。次回の「Top trends in medical writing」もどうぞお楽しみに。
References
- Millar N, Batalo B, Budgell B. Trends in the use of promotional language (hype) in abstracts of successful National Institutes of Health grant applications, 1985 to 2020. JAMA Netw Open. 2022 Aug 1;5(8):e2228676. doi:10.1001/jamanetworkopen.2022.28676. PMID: 36006644; PMCID: PMC9412227.
- Jameson JL, Longo DL. Precision medicine—personalized, problematic, and promising. N Engl J Med. 2015 Jun 4;372(23):2229-34. doi:10.1056/NEJMsb1503104. Epub 2015 May 27. PMID: 26014593.
- Purpura CA, Garry EM, Honig N, Case A, Rassen JA. The role of real-world evidence in FDA-approved new drug and biologics license applications. Clin Pharmacol Ther. 2022;111(1):135-44. doi:10.1002/cpt.2474.
- Hoogenboom BJ, Manske RC. How to write a scientific article. Int J Sports Phys Ther. 2012 Oct;7(5):512-7. PMID: 23091783; PMCID: PMC3474301.
